5.1 結言
溶融亜鉛ぜい化割れのき裂発生過程と進行形態を観察するため、溶融亜鉛浴内で4点曲げ試験を行って得られた丸棒試験片と溝付き試験片のめっきを除去し、SEMによる表面の観察を行った。その結果、次のような結論が得られた。
1)丸棒試験片表面の観察では、粒界の選択的腐食が観察されたのは、曲げ外側であり、曲げ内側、中間付近では観察されなかった。このことから、粒界の選択的腐食は、塑性変形を生じ、かつ引張応力が作用している部分には発生するが、塑性変形をしても圧縮の場合は発生しないと考えられる。また、断面の観察では見られなかったが、き裂は折損部だけではなく、その近傍にもほぼ等間隔で多数発生しているのが観察された。これから、溶融亜鉛によるき裂発生は、粒界割れからなるぜい性的破壊であるという特徴をもちながら、き裂は、最初に発生した位置で拡大し、破壊に至るのではなく、若干の塑性変形を伴いながら、同時に多数の位置で発生し進展するという特徴を持った破壊であると考えられる。
2)溝付試験片の観察では、粒界の選択的腐食が観察されたのは、溝底部の応力が最も高くなっている付近で、表面近くには観察されなかった。これから、粒界の選択的腐食は、応力がある程度以上になってから発生すると考えられる。さらに、粒界の選択的腐食が観察されたのは、溝底部の破断部付近であることから、粒界の選択的腐食は多少塑性変形を生じてから発生していると考えられる。また、粒界の選択的腐食現象について、溝付試験片の観察によって得られた結果と、丸棒試験片の観察によって得られた結果とは一致していることがわかる。
3)表面観察から、粒界の選択的腐食の開始時期は、多少塑性変形を開始してからであることがわかった。これは、断面の観察結果とほぼ一致していた。
4)粒界の選択的腐食とき裂の違いを判断するために、Gh法によって各試験片の結晶粒界を現出した。試験片の表面の選択的腐食と考えられる粒界の大きさと、Gh法によって現出された1結晶粒の大きさを比べた。その結果、結晶粒の大きさは一致していた。
5.2 謝辞
本論文作成にあたりましては、江藤元大教授、清水秀治先生に終始、暖かい御指導、御鞭撻をいただきました。ありがとうございました。
また、株式会社杉田製線工場の菊地進氏には、本研究の計画から、論文作成に至るまで、丁寧な適切な御指導をいただきました。心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
5.3 参考文献
1) 中佐哲治郎、武井英雄、松田雅彦、材料 37,413(1988)P.166
論文 軟鋼の溶融亜鉛ぜい性における亀裂伝播挙動
2) 中佐哲治郎、武井英雄、松田雅彦、竹本新治、鉄と鋼 34,376(1985)P.76 論文 高強度鋼予き裂試験片溶融亜鉛ぜい性
3) 中佐哲治郎、武井英雄、竹本新治、材料 33,372(1984)P.1193 論文 軟鋼予き裂試験片の溶融亜鉛ぜい性に及ぼす引張試験、試験温度及びフェライト結晶粒径の影響
4) 菊池昌利、材料 30,329(1981)P.194 論文 溶融亜鉛中における切欠付き鋼板モデルの熱応力による液体金属ぜい化割れについて
5) R. Eborall and P. Gregory : J. Inst. Metals 84(1955-56)P.88
6) A.R.C. Westwood and M.H. Kamdar : Phil. Mag. 8(1963)P.787
7) 金谷 研、井上尚志、山戸一成、家沢徹、山下達雄、金沢正午、鉄と鋼 73(1987)S.1081 発表論文 橋梁部材のめっき時に発生する熱応力の検討−溶融Znめっき橋梁のめっき中での応力挙動の研究(T)−
8) 山本満治、武田鉄治郎、西坂孝一、鉄と鋼 71(1985)S.1216 オージェ電子分光分析による粒界亜鉛ぜい化の研究
9) A.K. Huntington : J. Inst. Metals 11(1914)P.108
10) W. Rostoker, J.M. McDaughey and H. Markus : Embrittlement by Liquid Metals, Reinhold, New York (1960)
11) 液体金属による割れ P.851, P.862
12) L.S. Bryukhnov, I.A. Andreeva and L.I. Likhtman : Sov. Phys. Solid State, 3(1962)P.2025
13) 市ノ瀬弘之、日本金属学会会報 8(1969)P.235-P.238
14) N.S. Stoloff and T.L.Johnston : Acta Met., 11(1963)P.251
15) 江藤元大、船見国男、山本恭永、清水秀治、杉田平次、菊地進、材料 40,452(1991)P.595 “溶融亜鉛めっきボルトのき裂発生に及ぼす前処理の影響”
16) 江藤元大、船見国男、山本恭永、清水秀治、杉田平次、菊地進、材料 41,470(1992)P.1636 “溶融亜鉛めっきボルトのき裂発生に及ぼすめっき処理の影響”
17) 江藤元大、船見国男、山本恭永、清水秀治、杉田平次、菊地進、材料 43,492(1992)P.1120 “溶融亜鉛めっきボルトのき裂発生に及ぼす冷却条件の影響”
18) 菊地進、江藤元大、船見国男、清水秀治、杉田平次、杉山嘉俊、材料 44,504(1995)P.1171 “ボルトの溶融亜鉛ぜい化割れおよびめっき性能に及ぼす冷却の影響”
19) A.B. Vladimirov, V.N. Kaygorodov, S.M.Klotsman, V.D. Symbelov and I.SH. Trakhtenberg : The Physics of Metals and Metallography, 39(1975),No.1,P.78