第2章                溶融亜鉛めっきと液体金属ぜい化

 

2.1 溶融亜鉛めっき

  2.1.1  溶融亜鉛めっき

  固体金属を溶融した別の金属中に漬けると、一般に固体金属は溶融金属によって侵食される。この現象を用い金属表面に他の金属または合金の薄い金属皮膜をつくることを溶融めっきという。その中で溶融金属に亜鉛を用いた方法が溶融亜鉛めっきである。浴に漬ける時間は一般に、数秒から1分以内である。化学反応によって、素地表面に合金層が生成され、製品を浴より引き上げる時に、その浴組成の金属を引張ってくる。このようにして、めっき層が形成される。

  溶融亜鉛めっきは、耐食性に優れ、安価であることなどから送電線鉄塔や橋梁などの大型構造物及びその締結部品であるボルトなどに、広く適用されている。

 

亜鉛めっきの主な特徴を下記に示す。

長所:

(1) ボルト、ナットのような小物から、単体で10トンを超えるような大型構造物までめっきできる。

(2) 複雑な形状に加工されたものでもめっき可能である。

(3) タンク内面や箱型の中空体で、目視できない部分や手の届かない部分にもめっきできる。

(4) 多量の亜鉛が付着しているので耐食寿命が長く経済的な防錆法である。

  短所:

 (1)溶融亜鉛めっき時に溶接ビードトウ部やボルト首下丸み部などの応力集中部にき裂を生じることがあり問題になる。

 

  溶融亜鉛めっきの作業工程は、前処理工程、亜鉛めっき工程、仕上げ工程の各工程に大別できる。次頁の2.1.2項に、各作業工程とその目的及び作業内容を示す。(web省略)

 

 

 

 

2.2 液体金属ぜい化

液体金属中で固体金属が割れるという現象は、1914年にHuntington9)により初めて報告されている。アルミニウム青銅を水銀に浸漬すると粒界破壊をおこすというものだった。1960年、Rostoker10)らはこの関係の観察と知識の集約を行っている。この現象は液体金属ぜい化(Liquid Metal Embrittlement)と呼ばれるようになり、ぜい化の機構に対する模索が続いて行われた。11)ここで、ぜい化現象とは、ぜい化対を構成する固体金属が液体金属環境中で引張応力を受けるとしばしばぜい性的な破壊が観察され、降伏点あるいは多少塑性変形した後に起る現象で、破壊面はマクロ的には応力軸に垂直である。10)また多くの場合、破壊は降伏点近傍でおこるが、ぜい化の程度は液体金属塑性を変えると広範囲に変化する場合がある。11)

ぜい化の条件としては、ある程度塑性変形が起ること、転位に対する安定な障害物が存在すること、液体金属原子のこの障害物での吸着と、続いて伝播しているクラック先端での吸着が起ることがある。ぜい化の程度に影響する要因には応力系では、ぜい化は引張り、曲げなどで現れるが、圧縮の場合には生じない。温度については、液体金属の凝固点以下の温度では、当然ぜい化を生じないが、温度上昇と共に、高温側では延性を回復する場合がある。また、どのような強度であっても、延性の現象を生じる。液体金属の組成としてアルミニウム合金を水銀でぜい化させる場合、水銀に亜鉛、ガリウムを添加すると、ぜい化が促進される。ナトリウム、マグネシウム、カドミウムは影響がなく、錫はぜい化を弱めることが知られている。11)

液体金属による固体金属のぜい化は直接的には粒界拡散によるものと解釈されやすいが、液体金属ぜい化に共通した必要条件とは考えられない。その理由として、通常の引張り試験では、破壊までの固体と、液体の接触時間が極めて短いことや10)、適当な応力状態に液体金属を塗布すると瞬間的に破壊するからである。12) 13)

液体金属によるぜい化機構は1955年にEborall5)らにより提案された表面エネルギー低下説と、1963年にStoloff, Johnston,14) Westwood, Kamdar6)らによる原子間力低下説がある。

表面エネルギー低下説では、水蒸気の存在下でガラスや雲母の破壊強度が低下すること及び鉄の水素ぜい化を説明するために用いられる考えと同じである。すなわち、液体金属の吸着により、表面エネルギーを低下させ、クラックの形成と伝播を容易にするということから、ぜい性破壊の条件と考えられている。13)

一方、原子間力低下説では、ぜい化対をなす固体金属と液体金属原子間の相互作用は極めて小さいので、クラック先端での弾性エネルギーが液体金属原子の吸着を生じさせるのに、必要な活性化エネルギーを与えるか或いは固体原子間の配列を変えて、液体金属原子の吸着を引き起こすような原子間作用を生じるものと推定されているものである。13)